特別企画

年末企画:2013年「私はこれを買いました!」(後編)

 2013年を締めくくるにあたり、本誌へ「新製品レビュー」「交換レンズ実写ギャラリー」「気になるデジカメ長期リアルタイムレポート」をご寄稿いただいている皆様および弊誌編集者に、今年新品で購入した思い入れのあるデジタルカメラについて語っていただきました。(50音順、敬称略)

 (前編はこちら

キリッと頑丈で戦闘的なかっこよさがある

OLYMPUS OM-D E-M1/曽根原昇

 今年の始めを思い返してみると、そう、あの頃は欲しいカメラやレンズというものが特になく、ついに自分も煩悩世界から解放されたのかと、澄み渡るような想いで新年を迎えていた。そんなわけなので、2013年に我が家に来たデジタルカメラは実に少なめ……のはずが、改めて数えてみると、SIGMA DP1/2/3 Merrillの3兄弟に、PENTAX Q7、オリンパスのSTYLUS XZ-10、OLYMPUS PEN E-P5、OLYMPUS OM-D E-M1と、ざっと7台に達していた。

 まあ、今年はコンパクトカメラやミラーレスカメラに魅力的な製品が相次いで登場したのでこれは仕方のないこと。物欲はなくとも体が反応して財布からお金を出すのはわれわれカメラ愛好家の普遍的なサガである。

 さて、いずれも優れた特徴を備えた7台であるが、そんな中でも普段の趣味撮影から真面目な撮影仕事まで幅広い活躍を期待して導入したのがE-M1だ。

 まずなによりデザインがいい、ミラーレスなのにキリッと頑丈で戦闘的なかっこよさがある。ダイヤルやボタンの配置を始めとした操作性、内蔵EVFの詳細感、AF性能など、E-M5からの進化として望んだ部分が期待以上にグレードアップしてくれた。

 しかもE-M1は“フラッグシップ”である。フラッグシップを名乗るためには目新しい先進機能だけでなく、カタログスペックには表れないカメラとしての基本性能の高さを要求されるということで、これは実際、並大抵の設計努力ではなしえないことなのだ。

 10月19日のM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROレンズキット発売日にパワーバッテリーホルダーHLD-7と同時購入して以来、すでに多くの現場で活躍してもらっている。2014年にはさらに交換レンズの拡充を図り、ますますミラーレス機の本格運用を推し進めていくことになるだろう。

そねはらのぼる:この年末企画に参加させていただくのは今回が初。どうぞ皆様、宜しくお願いします。2013年は個展を開催することができて、ひと段落といった心もち。2014年も写真展を開催して、デジカメWatchで告知してもらえるよう頑張ります。

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光学ファインダーとライブビューの両方取り

キヤノンEOS 70D/永山昌克

 EOS 70Dのいちばんの魅力は、光学ファインダーと液晶ライブビューのどちらを使った場合でも、快適なAFスピードが味わえること。

 光学ファインダーで撮る際は、19点クロスの位相差AFによって、多少薄暗いシーンや動きの速い被写体に対してもストレスなく素早く合焦する。一方で液晶ライブビューで撮る際は、画面内の広いエリアをカバーするデュアルピクセルCMOS AFがてきぱきと作動。バリアングル液晶モニターを生かして、自由な構図での撮影が楽しめる。

 この2つを両立させたことは、従来機EOS 60DののんびりしたライブビューAFに苛立っていた私には画期的だった。正確には苛立ちを通り越して、一眼レフのライブビューAFはこれが限界かも、というあきらめの境地に達していた。スムーズなライブビュー撮影を行なうには、やはりミラーレスに移行するしかないのか……。光学ファインダーがないと安心できない旧世代でありながら、ライブビューに魅力を感じる欲張りな私にとっては“冬の時代”ともいえる、もどかしい日々が続いていた。

 だからこそEOS 70Dの発売直後には、なんら躊躇も未練もなくEOS 60Dを売却して買い換えた。そして現在まで、仕事でもプライベートでも大活躍している。細かい部分に改善要望点はあるものの、カメラ全体の出来にはおおむね満足だ。

 これとは別にEOS 5D Mark IIIも使っているが、フットワーク重視の撮影では迷わずEOS 70Dを選ぶ。35mmフルサイズ機に比べると画質面では見劣りするが、携帯性と取り回しのよさ、そして快適なライブビューAFが画質差以上のメリットを生み出してくれるケースは少なくない。しばらくはこの世の春を楽しみたい。

ながやままさかつ:フォトグラファー。スチール撮影を担当した映画「ゼウスの法廷」(監督/高橋玄、主演/小島聖)が来年3月からシネマート六本木ほかで全国公開。邦画ファン必見の硬派な法廷ラブストーリーです。

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フルサイズの小形軽量ミラーレスに衝撃

ソニーα7R/塙真一

 フルサイズセンサーを搭載するカメラはボケも含めた描写が大好き。だけど、毎日持ち歩くなら、大きいカメラよりもミラーレスのような小さいカメラの方がいいな。と、センサーフォーマット、カメラのサイズによって日々使い分けをしている私にとって、35mmフルサイズのセンサーにローパスレス、そして小型軽量のミラーレスという組み合わせのα7Rの登場は衝撃的。これは買うしかないでしょうという思いで迷わず予約した。

 α7とα7Rとで悩みはしたが、やはりどうせならローパスレスで楽しみたいということでα7Rに決定。購入時の唯一の悩みは新たにラインナップされた純正FEレンズが、Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZAの1本しかないこと。

 α7ならFE 28-70mm F3.5-5.6 OSSのキットレンズもあるのだが、どうせいずれ発売されるVario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSSを買うだろうから、焦点距離域がかぶる暗めの標準ズームはいらないだろうと判断。でも、35mm F2.8 1本ではレンズ交換式カメラの意味がない。新しいカメラを楽しみたいという一心だけで、ライカMマウントレンズが装着できるサードパーティ製のマウントアダプターも購入。

 まずは35mm F2.8の純正レンズだが、これはとにかくα7Rの描写力を思う存分発揮してくれる素晴らしい解像力を持つレンズだ。最新のカメラとレンズによる描写はソニーの本気を感じる。一方ライカレンズを付けると、オールドレンズらしい優しい写真も撮れ、そこそこ満足。ピーキング機能を使えば見やすいEVFでピントもなんとかなるという感じだ。

 あとは、とにかく純正レンズのラインアップを増やしてほしいと願うばかり。この記事が掲載される頃にはSonnar T* FE 55mm F1.8 ZAも手にしているだろうが、単焦点レンズ大好きな私としては、もっともっと明るい単焦点が欲しいところだ。

 AFに関しては激速とはいえないが、とりあえず明るいシーンではほぼほぼ満足という印象だ。ポートレートでは瞳AFが素晴らしい活躍をしてくれ、撮影が楽しくなる。まだまだシステムとしては物足りなさを感じるα7Rだが、とりあえず新しいジャンルのカメラが我が家のラインナップに加わったということで、めでたしめでたしの2013年の年末となっている。

はなわしんいち:2013年はアメリカやヨーロッパの街を撮り歩き、すっかり貧乏になりました。でも、海外の街撮影はやっぱり楽しい。年が明けるとCP+モードに入る予定です。CP+会場でみなさまをお待ちしています。

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小さすぎず軽すぎず「作品を撮りたい」と思わせる

ライカXバリオ/藤井智弘

 正直なところライカXバリオは、発表された直後はあまり興味がないカメラだった。ズームレンズになったライカX2、くらいのイメージで、ドキドキ感もワクワク感もなかった。

 ところがデモ機を借りてみたら、だんだん最初の印象が変わってきた。“コンパクトデジタル”と呼ぶには大柄だが、ライカらしさを持ったデザインで、とてもホールドしやすい。無垢のアルミニウムから削り出したトップカバーの質感も高い。

 そしてズームリングとピントリングの感触は、ねっとりしていて、適度なトルク感。MFレンズを使っているような感覚だ。レンズのテレ側がF6.4とやや暗く感じるが、実用上はF5.6と大きな差はない。それよりAF時はズーム全域で30cmまで寄れるのがありがたい。だんだんライカXバリオに興味が湧いてきた。

 実際に撮影した結果も、満足できる画質だった。レンズの解像力が高く、ズーム全域で画面周辺まで安定している。ズームレンズや高い近接撮影能力を持ち、ライカMより小さくて軽い。しかも小さすぎず軽すぎず、「作品を撮りたい」と思わせるサイズだ。

 これならライカXバリオのみでも、M型ライカと併用でも使いやすそうだ。返却する頃には、すっかり「ライカXバリオが欲しい」という気持ちになっていた。しばらく迷ったが、可能性の高さを信じて注文した。

 届いた“MyライカXバリオ”には、ライカMの購入時に手に入れたライカEVF 2と、オプションのレンズフード、ハンドグリップも装着し、快適な“ライカXバリオライフ”を満喫している。

ふじいともひろ:写真家。今年はライカM、エルマリートM f2.8/28mm ASPH.、ライカXバリオとライカばかり買った。ちなみに現在、ライカ二子玉川店とライカそごう横浜店で、私がライカMとライカXバリオで撮影した作品を展示中。2014年の初夏くらいまで展示されている予定。

新製品レビュー ライカXバリオ

D600+58mm F1.4は私のベストコンビ賞

ニコンD600/水咲奈々

 そろそろ35mmフルサイズ機が欲しいと思いながらも、いずれの機種もそれ相応の重さで結局持ち歩かなくなるんじゃないかと言う不安に負けて購入をためらっていたのですが、D600が発表されたときにその軽さにビックリしました。購入を迷っていたD700に比べて235gも軽い! しかも視野率100%! これは買いか!?

 そう思いながらも、発表された昨年の秋は私は0歳の息子を自宅で育児しながら仕事をしていたので、そんなにロケなんて行けないかも……などと購入に消極的になっていました。状況が変わったのは今年の3月。入園激戦区の我が区で奇跡的に4月からの保育園入園が決まったのです。行ける! 平日のロケだって行ける! もう、光の速さで買いましたよ(笑)。

 箱から出した瞬間に思ったのはやっぱり軽いこと。そして今まで使っていたAPS-C機とほぼ同じサイズ。なんだかカメラ業界の技術の進歩にジーンと来てしまいました。昔、カメラ雑誌の編集者をしていたときはフルサイズ機なんて気軽に持ち歩くものじゃなかったし、ライブビュー機能が付いている機種も限られていたのに……日進月歩、おかーさん感動して涙が出ちゃうよ。

 しかし、中身は立派なフルサイズ機で画素数も今までとは段違いに高いので、レンズもそれに応えられるものでないと意味がありません。色々使ってみたもののレンズ迷子になりかけたときに発売されたのがAF-S NIKKOR 58mm f1.4 G」でした。

 私が良く使う単焦点は50mmと60mmが多いので、この画角はまさに大好物。そしてライフワークであるクラゲの撮影を行なう水族館は薄暗いので、レンズは明るければ明るいほど助かります。そしてD600を購入したのと同じ理由でコンパクト。

 思った通り、D600と58mmのコンビネーションは見た目もバッチリでした。普段使いのリュックにも入ってしまうこのコンビで、来年も気軽にロケに出かけたいと思います。

みさきなな:今年は久し振りに写真展に出展し、いい刺激を受けることができました。来年はCP+で初めてのセミナー講師に挑戦する予定です。みなさん応援お願いします!

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気軽に撮りたいときに手が伸びる使いやすいカメラ

OLYMPUS PEN E-P5/吉住志穂

 今年は、E-P5を購入しました。後に発売されたE-M1も購入したのですが、両者を比べるとE-M1の方が有効画素数が多く、EVFが備わっていて、防塵・防滴と良いことづくめ。しかし、私の撮影スタイルにおいては、使っていて両者の差を大きく感じることがあまりないのです。

 それというのも、同じ世代の機種なので、操作性能がどちらも同じように上がっているし、私の場合、ライブビュー画面を見ながら撮ることが多いので、普段はファインダーのない機種で十分。むしろボタン配置がシンプルだし、若干軽いので、気軽に撮りたいときにはE-P5に手が伸びます。それと、外観はE-P5の方がオシャレなので好き。ストラップもピンクの刺繍が施されているものを合わせています。

 従来のモデルに比べて、もっとも嬉しい進化はAF性能。FAST AFによるスピーディーなピント合わせとAFターゲットが81点と細かくなったこと。前モデルでは花のクローズアップ撮影時において、一度背景にピントが合ってしまうとなかなか花に合ってくれないということがよくありました。それでも一度近距離に合わせ直してみたり、MFを使うなどして、うまく付き合いながら使っていたのですが、AFターゲットの枠を小さくすることで、細く小さな被写体でもピントが合わせやすくなりました。

 また、選べるシャッター速度が1/8,000秒までになり、ISO LOWではISO 100相当で撮影できるようになりました。被写体の動きを止めたいというよりも、光量を抑える点で便利なのです。M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8やM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8のレンズでは絞り開けて撮る機会が多いので、明るいところでは露出オーバーになってしまいます。

 これらのレンズ用にNDフィルターを購入しましたが、忘れた時はしぶしぶ絞りを絞り込むしかないので、思い通りのボケが得られません。背景をふんわりとさせたいテーブルフォトや子どもの撮影時には助けられます。

 せっかく2機種購入したので、フィールドでじっくりと作品を撮るときにはE-M1を選び、子どもや街をスナップするにはE-P5とシーンに合わせてカメラを使い分けながら、撮影を楽しんでいます。

よしずみしほ:1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、写真家竹内敏信氏に師事。2005年にフリーとなり「花のこころ」をテーマに撮影している。2014年には愛娘の写真展を開催予定。ママカメラマンとして毎日奮闘中!

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屋外ブツ撮りカメラのエース的存在として活用

パナソニックLUMIX DMC-LX7/吉森信哉

 昨年8月に発売されたLUMIX DMC-LX7」は、35mm判換算24mm相当の広角端でF1.4という明るさや、アスペクト比(4:3、3:2、16:9)を変えても同一焦点距離の画角が得られるマルチアスペクト機能など、かなり魅力的な存在であった。

 しかし、その少し前の6月、ボクは1型センサー搭載で圧倒的な高画質が得られるソニーのサイバーショットDSC-RX100」を購入していた。ということで、DMC-LX7を気にしつつも、DSC-RX100を使い続けている。

 高画質ぶりに大いに満足したDSC-RX100ではあるが、使い続けていくうちに不満点も出てきた。まず、ズーム広角端の開放F値はF1.8と明るいが、望遠端はF4.9と平凡。広角端の画角も28mm相当とこれまた平凡だ。広角端以外のズーム域だと、マクロ能力が極端に低くなるのもツライ。そして、F1.8の明るさを活かすためのNDフィルターが内蔵されていない……。といった点が、気になってきたのである。

 ――あ、これらの不満点って、DMC-LX7があれば解決するじゃないの!? 今さらながらそう思った(苦笑)。発売からすでに1年以上が経っていて、販売価格も3万円台まで下落。レンズ保護方式がバリア内蔵式ではなく“キャップ着脱式”という点がネックだったが、用品メーカーから発売されている自動開閉キャップを購入することで解決! こういった動機や条件により、LUMIX DMC-LX7を購入したのである。

 仕事柄、ボクは屋外で、カメラやレンズなど“ブツのイメージカット”を撮ることが多い。そういう用途で携行するカメラは、コンパクトでかさ張らないモノが好ましい。そして、一般的なコンデジとはひと味違うハイレベルな描写性能も必要になる。現在、このDMC-LX7が“屋外ブツ撮りカメラのエース的存在”になっているのである。

よしもりしんや:フォトグラファー。昨年に紹介したニコンD800に合わせ、この1年間でフルサイズ対応のニッコールレンズを少しずつ揃えてきた。だが、そのせいか、気がつけば例年より撮影旅行の行先や予算がショボくなった気が……(苦笑)。

新製品レビュー パナソニックLUMIX DMC-LX7

シンプルなデザインに一目で気に入る

FUJIFILM XQ1/武石修

 画質に定評のある富士フイルムのX-Trans CMOSセンサーを搭載したカメラをかねてから使ってみたいという思いがあった。だがレンズ交換式のXシリーズを買うとなると、レンズ資産を総入れ替えしなければならず私には荷が重い。だが、幸い富士フイルムにはX-Trans CMOSセンサーを搭載したコンパクトデジタルカメラをラインナップしていた。

 X-Trans CMOSセンサーを積んだコンパクト機としては、FUJIFILM X20(X-Trans CMOS IIセンサー)が大いに気になってはいたものの、ややサイズが大きめだったことなどから購入は見送っていた。その点XQ1は、X20と同スペックのセンサーを搭載した上でよりコンパクトになった。シンプルなデザイン(特にシルバー)とあわせて一目で気に入ったのだった。

 実は、普段使い用として2年ほど使っていたコンパクトデジタルカメラのレンズにゴミが入ってしまい、影が写り込むようになった。さほど高価なカメラではなかったのだが、修理するとそれなりの金額が掛かることからどうせなら新調しようということになり、この年末にXQ1を購入した。

 XQ1は、センサーが同クラス機の1/1.7型より少し大きな2/3型を積んでいるのもちょっとだけ得をしているようで気に入った。上級機から受け継いだ点像復元技術などが生み出す絵も自分で試してみたかったというのもある。

 まだ使い始めて日が浅いが、シャッタータイムラグなども思った以上のレスポンスで満足している。また、アルミ削り出しのコントロールリングも指に吸い付くようで心地よい。なにより、2点吊りのストラップで首からさげているとなかなか格好いいのではないかと悦に入っているのである。

たけいしおさむ:本誌編集記者。今年の大きな買い物といえばハイエンドスマートフォンのXperia Z1。このカメラ機能も便利に使っていますが、やはり手元にはデジタルカメラを置いておきたいものです。来年はフルサイズミラーレスがゲットできればいいなぁ。

新製品レビュー FUJIFILM XQ1

デジカメWatch編集部