私がOM-Dを使う理由。- My Style, My Olympus -

Vol.03:相手への想い・愛情が感じられる写真を心がけて〜ヒダキトモコさん

その人のいる空間や空気感ごと写真に切り取る

歌い切った後に見せた、長山洋子さんの一瞬の表情を客席の通路から撮影。柔らかな味わいのあるレンズ描写で、歌の世界観を静かに捉えた。(春日部市民文化会館)
オリンパス OM-D E-M5 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO /300mm(600mm相当)/ 絞り優先AE(F4、1/200秒、±0EV)/ ISO 2000

個性豊かな写真家が登場するこの連載、「私がOM-Dを使う理由。」。写真に対する考え方を聞くと同時に、撮影現場で活躍するOM-Dについても答えてもらいます。

3回目の今回は、舞台やCD/DVDジャケットなどの撮影で活躍されているヒダキトモコさんの出番です。(編集部)

ヒダキトモコさん。埼玉県生まれ。幼少時代は米国ボストンに在住。ステージ写 真、雑誌、ジャケット写真、企業広告などを撮影。2015年11月に、アートサロン毎日にて加藤登紀子50周年記念展を開催。日本舞台写真家協会所属。Acqua - Hidaki's Office of Photography©SHIN YAMAGISHI

現在、どのような写真関連の仕事をされていますか?

エンタテインメント分野とビジネス分野が主です。

それぞれ、エンタテインメントでは音楽雑誌の表紙やグラビア、アーティスト写真、コンサート写真、舞台パンフレット、CD/DVDジャケットなどの撮影、ビジネス分野では各種企業のパンフレットや広告、役員撮影やビジネス誌の取材などを担当しています。

歌劇「オリンピーアデ」より向野由美子さん(上)と、幸田浩子さん(下)。遠い調光室からふたりの表情に迫り、透明感のある照明と美しい発色を狙った。(紀尾井ホール)
オリンパス OM-D E-M1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO / 300mm(600mm相当)/絞り優先AE(F5、1/125秒、±0EV)/ ISO 4000
ピアニスト長富彩さんのポートレート撮影。アートフィルター「ファンタジック・フォーカス」を使い、被写体のもつ静かで清らかな雰囲気に合わせて、より透明感の高い柔らかな描写を目指しました。アートフィルターをはじめ、ポートレート撮影に効果的な機能が充実しているため、撮影段階からイメージに近い撮影が可能となりました。このようなフォト・セッションの場合、しっかりシャッター音を出すことで、撮る側・撮られる側のお互いの呼吸を合わせて撮影しています。
オリンパス OM-D E-M5 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 150mm(300mm相当)/絞り優先AE(F2.8、1/200秒、±0EV)/ ISO 250

写真を撮るようになったきっかけは?

当初は大学卒業後、企業の広報部で働いていました。その部署でたまたま写真担当になり、各種撮影に立ち会ったり、都内のレンタルスタジオや現像所などに出入りするようになり「商業写真って面白い」と思ったのが直接のきっかけです。それから写真の勉強を本格的に始めました。

影響を受けた写真家、写真集、メディアは?

子どもの頃は音楽のジャケット写真を見るのが好きでした。特に当時アイドルだった中森明菜さんのジャケット写真が毎回斬新で、新曲が出る度に「こんどはどんなビジュアルで来るのか?」と、いつも写真を楽しみにしていました。

写真家を志してからは、中嶌英雄先生のステージ写真、山岸伸先生の女性写真集、そして分野は違いますが自然写真家の星野道夫先生のアラスカの写真にとても影響を受けています。

その影響は自分の作品のどんなところに現れていると思いますか?

被写体に対する敬意や愛情が感じられる写真、姿かたちだけでなく、相手の心を感じる写真、深いところを静かに見守るような写真がよいと思っています。

これは3人の先生方の写真からそれぞれ感じるものでもあります。被写体は氣のようなものを発していますので、その人のいる空間や空気感ごと、しっかり感じて切り取りたいと思います。

また、新しいことにどんどんチャレンジして、見てくれる人をいい意味で驚かせる「鮮度」をいつも求めている気がします。

長山洋子さんの「じょんから女節」歌唱中の一枚。この楽曲は長山さんの演歌の中でもロック色の強い作品。激しいリズムで津軽三味線を立ち弾きしながら長い振袖を揺らし、渾身の歌唱とパフォーマンスが続くため、ダンサーやアスリートを撮るのと同じくらいの緊張感で撮っています。このカットは歌の合間にクルリと回った瞬間、キラリと流れる大粒の汗と爽やかな笑顔を捉えることができました。
オリンパス OM-D E-M1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 46mm(92mm相当)/絞り優先AE(F3.5、1/800秒、±0EV)/ ISO 1600

舞台撮影の際、心がけていることは?

作品や被写体をできるだけ理解してから臨むこと。舞台進行中、被写体の心に寄り添うこと。撮影中の自分の感動にブレーキをかけず形にすること。気配は消すこと。開演前にアスリート並みの準備運動をしておくこと。

今回使った機材の印象は?

M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROは思った以上の迫力で撮影でき、描写のラインは優しく色合いは鮮やか。M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROは使いやすい焦点域で、ステージ撮影では一番使用頻度が高いレンズです。超広角ズームレンズのM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROは、思い切って寄ることができてハンドリングしやすい大きさだと感じました。

OM-D EM-5 Mark IIは静音モードが素晴らしいです。おかげで、撮影可能な瞬間が増えました。

全般的にボディは軽量、レンズは小型で明るく、コストパフォーマンスも含めトータルでとてもよい機材ポートフォリオとなっていると思います。

加藤登紀子さん50周年記念コンサート。この日はラトビアから来日したオーケストラとの共演のため、静音モードで撮影した。(横須賀芸術劇場)
オリンパス OM-D E-M5 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 95mm(190mm相当)/絞り優先AE(F8、1/160秒、±0EV)/ ISO 1600
山本和智さん作曲『3つの箏と室内オーケストラのための「散乱系」』より。演奏は右から平田紀子さん・中島裕康さん・寺井結子さん。リハーサルの時にステージ真下、中島さんの足元に仰向けになり、全員を見上げるようにして超広角で撮影。箏の弦を指がなぞる音が静かに響く中、静音モードを使いました。シャッター音を絶対に出してはいけない瞬間で、どうしても撮りたい瞬間。そのジレンマを解消してくれた瞬間の1枚です。(邦楽ジャーナル2015年11月号)
オリンパス OM-D E-M5 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 8mm(16mm相当)/絞り優先AE(F3.2、1/200秒、±0EV)/ ISO 2500

写真と音楽の共通性・表現力などについて、思うところはありますか?

写真も音楽も、何かをきちっと表現する部分と、エモーショナルな部分とが共存し、それが互いにマーブル状になって生まれる一つの作品という気がします。

表現力という意味ではどちらも言葉がいらないので、世界のどこで誰に見せても、どの時代に見せても、被写体や作り手の想いが伝わるという部分が共通の強みである気がします。

写真以外に興味あることは?

学生時代の仲間と時々行く山のぼり。OM-D E-M5(初代)を1台首から下げながら、自由に風景を撮ったりしています。下山後はみんなで、焼肉と温泉でリフレッシュします。

それから、日本の伝統芸能から西洋のクラシック、オペラや欧米のロックまで、いろいろな音楽・舞台に今年はもっと触れたいです。仕事で撮る場合はもちろん、それ以外の時間でもできるだけ多くの機会をつくって劇場へ行き、純粋に客席に座って、色んなことを感じたいです。

加藤登紀子さんの年末恒例「ほろ酔いコンサート」からの一枚。静かな弾き語りの最後、ギターの弦から指が離れる瞬間を静音・モードで。ISO感度も上げていますが、味わい深い描写になりました。ステージでは急に眩しいくらいの光に溢れたり、逆に光量が極端に少なくなる瞬間があります。従来は感覚だけを頼りに撮影していましたが、LVブーストOFFの機能を使うことでビューファインダー内において光量をより正確に把握しつつ、自分らしい作風に仕上げて行くことができます。
オリンパス OM-D E-M5 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 90mm(180mm相当)/絞り優先AE(F2.8、1/160秒、±0EV)/ ISO 1600

今後取り組みたいシリーズやテーマは?

1人の人を長い期間をかけて折々に撮り続けてまして、それを今後も続けていきます。

昨年は6年間撮りためた加藤登紀子さんの写真を、「加藤登紀子50周年記念写真展」という形で発表させていただきました(2015年11月25日〜12月5日、於アートサロン毎日)。普段好きで撮り続けていて、気づくと長い年月を経て、すばらしい記録になっていたら素敵だと思います。

それ以外では、最近改めて横浜のもつ雰囲気の良さを感じていて、この街を舞台により多くの作品を撮影したいと思っています。

写真展の開催や写真集の発売など、告知があればぜひ!

現在、月刊邦楽ジャーナルの表紙の写真を毎月担当させていただいています。

1月20日からは、プレジデントWOMANオンラインで森綾さんの新連載「次世代イケメン紳士録」(毎週水曜日発行)の写真を担当させていただいてます。

福島県出身の写真家・管野秀夫さんの東日本大震災復興応援企画「#空でつながる 写真展vol.14 〜5年目の空に〜」に1点、空の写真で参加させていただきます。3月11日〜3月16日からオリンパスギャラリー東京で、4月15日〜4月21日はオリンパスギャラリー大阪で開催予定です。

博品館劇場で行なわれたDIAMOND☆DOGSの皆さんによる迫力のショー「Again…Shangri-La」の一枚。軽くて明るい手持ちのズームレンズを使うことで、全員が一瞬だけ見せてくれた表情、美しい体のラインなどを瞬時に捉え、思い通りの画角、描写で撮影することができました。2〜3時間におよぶステージにおいて、手持ちで集中力を高く保ちつつ撮影を続けるためにこのレンズ+ボディの軽さとハンドリングの良さが力を発揮してくれます。(博品館劇場/MGH 「Again…Shangri-La」 DIAMOND☆DOGS)
オリンパス OM-D E-M5 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 40mm(80mm相当)/絞り優先AE(F6.3、1/400秒、±0EV)/ ISO 5000

発売中のデジタルカメラマガジン2016年2月号にも、「私がOM-Dを使う理由。」が掲載されています。ヒダキトモコさんの作品や舞台撮影のテクニックを収録。ぜひごらんください!

デジカメ Watch編集部