気になるデジカメ長期リアルタイムレポート

PENTAX K-3【第2回】

高画素化しての高感度画質をK-5 IIsと比較

 K-3はK-5 IIsと同じAPS-Cサイズに2,435万画素の解像度を詰め込んだセンサーを採用している。一般に、センサーサイズを大きくしないまま高画素化を行なうと、センサー上の一個一個のセル間のピッチが詰まり、セル毎の受光面積が減るためノイズの面で不利と言われている。

 この定説に従えば、K-3は1,628万画素のK-5 IIsよりも高感度性能が落ちる懸念があるわけで、そのことは発売前の噂の段階からいわれ続けてきた。実際のところはどうなのか? それを調べるため、K-3とK-5 IIsをあえて比較してみることにした。

 テストは、カラーチャートと毛糸の玉を組み合わせたターゲットを、K-3とK-5 IIsで同じレンズを用いて撮影し、カメラの撮って出しJPEGファイルで比較した。光源はスタジオ用ストロボのモデリングランプをライトバンクで拡散し、1灯で光を回すようにセットした。撮影台の上面は光を回すために白バック紙を張り、背景はノイズがわかり易いようにグレーバックとする。フォーカスは中央1点スポットAFで、カラーチャートの中央のヒンジ部分に合わせた。

 照明の明るさは「ISO400、F8、1/4秒」になるように調節した。これはISO400でF4、1/15秒に相当し、一般的な室内照明より少し暗い程度の明るさになる。「低照度高感度テスト」という割にはずいぶん明るいではないかと思われるかもしれないが、三脚が必須であるような撮影では三脚に載せて感度を下げればよく、普通に考えればそのような暗さの中で高感度撮影は行なわない。高感度性能が求められるのは手持ち限界速度辺りなので、このように設定した。実際の暗所撮影性能については末尾に夜の東京・六本木の風景を撮影した作例を用意したのでそちらをご覧願いたい。

 カメラ側の設定は、絞りはF8に固定し、感度の変更に従いシャッタースピードを調節して適正露出を維持し、赤外線リモコンをミラーアップモードで使い、カメラブレを極力避けるようにした。ノイズリダクションは両機種ともオート(初期設定)とし、カスタムイメージは「ナチュラル」に設定した。

 レンズはあえてズームレンズを使うことにし、「DA 17-70mm F4 AL [IF] SDM」を選んだ。K-3にはキットレンズとして「DA 18-135mm F3.5-5.6 ED AL [IF] DC WR」が設定され、K-3に対する標準ズームとして推奨されているような印象があるが、個人的には、防塵防滴性能が必要ないならばこちらのDA 17-70mm F4のほうが、現状でK-3の標準ズームとしてはふさわしいものと考えている。絶対的な解像力では単焦点のシャープなレンズには及ばないが、解像力試験については稿を改めて掲載するので、ここでは一般的なレンズでの高感度試験として見ていただければと思う。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

K-3とK-5 IIsの高感度画質比較

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。サムネイルをクリックするとオリジナル画像を表示します。
ISO100(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO200(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO400(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO800(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO1600(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO3200(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO6400(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO12800(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO25600(左:K-3、右:K-5 IIs。K-5 IIsでは拡張感度)
ISO51200(左:K-3、右:K-5 IIs。K-5 IIsでは拡張感度)
ISO100(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO200(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO400(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO800(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO1600(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO3200(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO6400(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO12800(左:K-3、右:K-5 IIs)
ISO25600(左:K-3、右:K-5 IIs。K-5 IIsでは拡張感度)
ISO51200(左:K-3、右:K-5 IIs。K-5 IIsでは拡張感度)

 この結果を見ると、K-5 IIsの方がわずかにノイズが目立たないものの、K-3の高感度性能はK-5 IIsとほとんど変わらないと言えそうだ。感度を上げるにつれノイズレベルは高くなるが、その差が開くことはなく、ISO1600辺りを境にむしろK-3の方がよくなっている面もある。ISO6400でも色相ノイズはほとんど気にならず、輝度ノイズもまずまずに抑えながら実用に耐える解像力を保っているといえるだろう。

 冒頭に述べた「セルピッチが詰まるとノイズが増える」という常識に対する反論として、「セル数が増えることにより、被写体上のひとつのディテール表現に関係するピクセルが増えるため、ノイズリダクションの演算に使うことができる元の情報量が増え、結果的に解像感を損なわずにノイズを除去できるようになる」という説もある。今回の結果がそれを示唆していると断言するのは難しいが、ともかくもこのようなテスト結果を得た。

 ◇           ◇

 ご覧になった皆様はどのように感じただろうか。実際の暗所撮影はもう少し照明のコントラストが高い事が多いので、常にこのテストに則した結果が反映されるというわけでもない。しかし、少なくとも「APS-Cのまま高画素化したから、K-3の高感度はK-5 IIsよりも悪いに決まっている」という物言いは先入観に過ぎないのではないか。

 実は私自身も同じ先入観を持っていたので、この結果には正直なところ恐れ入りましたとしか言いようがない。現時点ではISO12800以上の感度でカラーバランスの崩れが大きいけれども、この点はファームウェアの熟成によって解決される事を期待し、今回の結論として、K-3の高感度性能はK-5 IIsに劣るものではないとだけ述べておこうと思う。

DA 35mm F2.8 Macro Limited / 1/15秒 / F5 / -1.3EV / ISO1600 / 絞り優先AE / WB:オートオート / 35mm
DA 35mm F2.8 Macro Limited / 1/8秒 / F5.6 / -1.7EV / ISO3200 / 絞り優先AE / WB:オート / 35mm
DA 35mm F2.8 Macro Limited / 1/8秒 / F5.6 / -1EV / ISO2500 / 絞り優先AE / WB:オート / 35mm
DA 35mm F2.8 Macro Limited / 1/13秒 / F3.5 / -1.7EV / ISO2000 / 絞り優先AE / WB:オート / 35mm
DA 15mm F4 ED AL Limited / 1/13秒 / F5.6 / -1.3EV / ISO2500 / 絞り優先AE / WB:オート / 15mm
DA 35mm F2.8 Macro Limited / 1/13秒 / F5.6 / -1.7EV / ISO2500 / 絞り優先AE / WB:オート / 35mm
DA 35mm F2.8 Macro Limited / 1/50秒 / F4 / -2.3EV / ISO1250 / 絞り優先AE / WB:オート / 35mm
DA 35mm F2.8 Macro Limited / 1/8秒 / F4 / -1.3EV / ISO1600 / 絞り優先AE / WB:オート / 35mm
DA 35mm F2.8 Macro Limited / 1/30秒 / F4 / -0.7EV / ISO640 / 絞り優先AE / WB:オート / 35mm

(撮影協力:yaocho-bar☆

【2013年11月29日】感度作例のサムネイルで、記事初出時にキャプションの機種名が左右逆になっておりました。

大高隆

1964年東京生まれ。美大をでた後、メディアアート/サブカル系から、果ては堅い背広のおじさんまで広くカバーする職業写真屋となる。最近は、1000年存続した村の力の源を研究する「千年村」運動に随行写真家として加わり、動画などもこなす。日本生活学会、日本荒れ地学会正会員

http://dannnao.net/