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造りの良さが光る、カーボン三脚の新機軸シリーズ

ベルボン「Professional Geo V630/640」

3段式のプロフェッショナル・ジオ(Professional Geo)V630
4段式のプロフェッショナル・ジオ(Professional Geo)V640

三脚も用途によって選びたい

写真歴がある程度長くなると、主に撮る被写体と撮影方法が決まってくると思う。そうなると、あれこれ迷いながら三脚を購入される方が多いはずだ。というのも、三脚には数多くの製品がある。おまけに「三脚は重いほうがいい」などという説もある。

この「三脚は重いほうがいい」は半分だけ正解というのが筆者の意見だ。たしかに、重い三脚であれば三脚自体がしっかりするために、余計なぶれを引き起こしにくいことは事実だろう。

けれど、正確には使用機材と三脚の推奨積載重量(耐荷重)が合っており、ある程度のパイプ径の太さがあり、各部のがたつきが少ないものであるほうがいい。夜景などで長時間露光を常時行う場合と、高速シャッターを切るだけの撮影でも選択肢は変わるはずだ。撮影地までの運搬方法や移動手段にもよる。つまり、撮影地そばまでクルマで持ち運ぶならよいが、あるいは公共交通と徒歩で持ち運ぶなら、必ずしも重い三脚が常時ベストとはいえない。撮影までに疲労してしまうのも困りものだからだ。

そう考えると、被写体や撮影方法などの用途によってふさわしい三脚は異なるわけで、いろいろな被写体を撮るベテランユーザーほど所有三脚の数も増えることになる。筆者も用途によって複数の三脚を撮影に持ち出す。

・一眼レフに大口径望遠ズームレンズや超望遠レンズを組み合わせる人
・中判カメラで自然風景や夜景撮影などを行う人
・絞り込んで撮影したりスローシャッターを使う人

そして、

・撮影地ではある程度歩いて持ち運び、設営時や撤収時にさっと三脚の伸縮ができたらいいと思う人

こうしたユーザーの選択肢に加えてほしいのが、今回ご紹介するベルボンのカーボン中型三脚の新シリーズ「プロフェッショナル・ジオ(Professional Geo)V」シリーズだ。

ギヤ式エレベーターと「Vロック」システムを備えた新シリーズ

新シリーズ「プロフェッショナル・ジオ V」には、3段型の「プロフェッショナル・ジオV630」(税別78,000円)と4段型の「プロフェッショナル・ジオV640」(税別79,400円)の2種が用意される。いずれも、雲台・ケース別売なので、好みのものを組み合わせよう。

どちらも最大パイプ径28ミリのカーボンパイプとマグネシウムボディを採用した中型三脚で、推奨積載重量は4kg。一眼レフであれば300mmF2.8クラスの望遠レンズをつけたボディにまで対応し、中判カメラにも使用可能だ。

3段式のV630と4段式のV640を縮めたところ
新ロックナットのVロック
最上段のVロックを緩めたところ。Velbonの刻印が正面にくると緩んだ状態

最大の特徴は、ギヤ式エレベーターを採用しながらも軽量化に努めたところ、ロックナットの回転角が小さいあらたな「Vロック」を採用したこと、石突が交換式で別売パーツにより可変式石突やスパイクにできること。

最大パイプ径28mmということで中型三脚のカテゴリーに入るが、従来の「ジオ・カルマーニュ」シリーズの上位クラスとして位置付けられるようで、さらにバリエーション展開がなされるのではないかと思われる。

重量級機材でも扱いやすいギヤ式エレベーター

まず1つめの特徴は、スクリューギヤを用いたエレベーターを採用していること。同社の三脚には上位機種を除いてはギヤ式のエレベーターは用いられていない。これは、どうしてもギヤ機構があるぶん重量化してしまうからのようだ。

本製品でギヤ機構を採用したのは、プロやアドアマの用いるミドルクラスより上位のカメラボディと大口径レンズといった、それなりの重さのある機材を用いてもがたつかず、精密でスムーズな上下動ができ、ストッパーを解除しても急速降下をしないようという配慮だろう。

そして、このエレベーター部分は部材の断面形状や加工方法を変更して従来よりも軽量化が図られている。

さらに、エレベーター固定時に起きがちなずれを最小限に抑えるために、エレベーターストッパーは三脚の中央で固定する方式が採用されている。

スクリューギヤを用いたエレベーター部分
センターエレベーターストッパー

ワンアクションで操作しやすい新「Vロック」

そして、特筆すべき改良点は、新たな機構のロックナットを用いた「Vロック」。脚部を伸縮する際の緩める、あるいは締める動作の回転角が約90度ととても小さい。

さらに、ロックナット自体も小型で軽く、伸ばす際に複数のロックナットを一度に握って緩めることができる。いずれも、伸縮の動作がすばやくできるわけだ。

従来から採用されている空回り対策である「インナージャットパイプ」とロックナットの回り止めにより、空回りや緩めすぎることもない。さらに、このロックナットも軽量化に寄与している。

Vロックは同時に握ることもできる
回転角が小さいので、4段型でもVロックを一気に緩めることができる

石突は交換式

石突は交換可能。別売りの可変石突セットやスパイク石突セットに取り替えることができる。足元が安定しない撮影現場で撮影する際には便利だ。

石突は交換可能
別売のスパイク石突セット
可変石突セットも別売で用意されている
標準の石突と合わせ、計3種類の石突が選べる
セミオートラチェット開脚機構
開脚キャンセルボタン
雲台には取り付けねじも取付可能

Vロックと各部の動作の確実さがうれしい

撮影に持ち出して試用してみた感想を述べたい。

Vロックは回転角が小さく、レバーロック式三脚派の筆者をうならせる仕上がりだ。これならばナットロック式もいいなあ、と思う。

また、各部のがたつきのなさもすばらしい。セッティングしてから微調整をする際に、がたつきがあって不用意に動いてしまう三脚は残念ながら意外と多い。プロフェッショナル・ジオVは作り自体がしっかりしているだけではなく、不用意な動作を防ぐセンターEVストッパーや、雲台の緩み防止対策のねじなどの各種対策が施されており、とてもありがたい。

精密なスクリューギヤのおかげで、エレベーターの急速落下がないこともうれしい。私物の三脚でエレベーターを使うことは少ないが、そのせいか収納時にエレベーターで指を挟んで痛い思いをすることが筆者は多いのだ。あれはけっこう痛くて泣ける。

3段式で自由雲台というのも選択肢としてありだ(雲台はQHD-63Q)
3段式V630はエレベーターを使用しないでも身長172センチの筆者の目の高さになる(雲台は3ウェイのPHD-65Q)
4段式V640は筆者の胸の高さになる
300mm F4レンズをつけたフラッグシップボディをしっかりと保持できる
望遠レンズつき一眼レフではなくても、しっかりした三脚が必要なことはある
V640は縮長が短いので、市販のトートバッグに入れても運搬しやすい。市販のトートバッグには三脚以外にもタオルや上着を入れることができ、撮影先でみやげ物などの買い物を入れるにも困らないのだ

風景撮影派はぜひ選択肢に

お勧めしたいのは、ある程度絞り込んで、ミラーアップや露出ディレー機能、リモートケーブルを用いてスローシャッターや長時間露光を多用する風景撮影派の人。それも、駅や車からも機材を担いで野山を分け入るような人だろう。

また、スローシャッターで水の流れや満天の星空を撮る。あるいは、工場夜景などの長時間撮影をする人などに特に向くのではないか。そのうえでそう重くない三脚を探しているユーザーには、プロフェッショナル・ジオVはぜひ考慮に入れてほしいと思う。

カメラの多画素化も進み、さらに連写機能を応用したノイズ除去やHDR撮影、星空撮影機能、あるいは回折補正機能による小絞りの実用化、さらにはハイレゾ撮影を行うことができる機種が増えて「しっかりした三脚」が必要な状況は増えている。

そしてベテランユーザーであればご存知だろうが、しっかりした三脚を用いることは写真撮影に際してむだなぶれやフレーミングの乱れを防ぎ、結果として撮影の生産性を上げるのだ。

「しっかりした三脚は重いし、重い三脚を持ち出すのは疲れるなあ」と思っているユーザーにこそ、いちど店頭で使用したい機材を持参して試用してほしい。意外なほどの軽さとしっかりした作りを体感できるはずだ。また、雲台もあわせて試してみるといいだろう。

協力:ベルボン株式会社

秋山薫