イベント

オールドレンズで女性モデル撮影にチャレンジ!

独特の描写を堪能 講師とのレンズ談義も

講師の松川コウジ氏(左)と大浦タケシ氏(右)

9月5日に写真教室「オールドカメラ・オールドレンズを使ってポートレート撮影を楽しもう!」が開催された。主催は、撮影会や写真教室を運営しているm-Gra。

このイベントは名称にもあるとおり、フィルム時代のカメラやレンズを使って女性モデルの撮り方を学ぶ写真教室だ。7月の第1回が好評で、今回が2回目の開催となった。

教室の最初は撮りやすい日陰で“肩慣らし”

写真教室といっても座学はなく、東京・潮風公園において実践で学ぶ形式。ある程度自由に撮ることもできるので、ちょっとした撮影会という側面もあった。

今回は、14時30分~16時と16時30分~18時の2部制。参加費は各部税込6,500円。各部とも定員に近い6名ずつが参加した。モデルは各部とも美萌さん。

参加者の機材。35mmフルサイズ機の人が比較的多かった

オールド機材に特化した写真教室

ミラーレスカメラの普及でオールドレンズファンも拡大した。古いレンズで撮影会に参加したい人もいると思うが、一般的な集団撮影会ではAFレンズを想定しているため、ピント合わせに時間のかかるオールドレンズではモデルが目線をくれる短い時間に撮ることが難しい場合もある。

m-Graを主宰し撮影会の講師を務めるカメラマンの松川コウジ氏が、オールドレンズに詳しいカメラマンの大浦タケシ氏と出会い、この教室が実現した。大浦氏によると、「一般的な撮影会ではモデルの動きが速く、ピント合わせが上手くいかない場合があります。また70-200mmといった望遠レンズを前提にしているため撮影距離が長く、焦点距離の短いオールドレンズでは大きく撮ることも難しいのです」と説明。

そのためこの写真教室では、モデルにはゆっくりと動いて(あるいはほとんど止まって)もらうようになっている。また広角や標準レンズでも大きく撮れるように、モデルに近づいて寄りのショットを狙えるように配慮されている。

こうしてモデルに近づいて撮れるのもこの写真教室ならでは

数十人規模の撮影会と異なり、少人数のため多少モデルとコミュニケーションを取りながら撮影することも可能だった。

今回の教室ではポートレート撮影の講師を松川氏が、オールドレンズ特有の使い方などを大浦氏が解説した。この参加人数に対して講師が2人付くことは写真教室では珍しいとのことだ。

松川氏はキヤノンEOS MにFD 50mm F1.4。「オールドレンズを使い始めたのはつい最近ですが、どんどんはまっています」
大浦氏はライカMモノクロームにキヤノン50mm F1.2(L)。「オールドレンズはモノクロの描写も面白いです」

松川氏と大浦氏によると、こうした女性モデルを被写体とした写真教室や撮影会は、初めて参加するには敷居の高さがあるそうだ。「初めの1歩がなかなか踏み出せないようです」(大浦氏)。これは、モデル撮影の初心者が現場でどのように振る舞えば良いのかわからないという理由もあるだろう。

その点この撮影教室では、撮影会やモデル撮影が初めてという参加者でも安心して撮れるような気配りがあった。松川氏からは撮影タイムでどこから撮ればよいかや、ある程度撮ったら別の人に場所を譲ること、移動の際には周りを見て他の人にぶつからないように気をつけることなど、基本的な留意点から説明した。今回、実際にモデル撮影が初めてという参加者もいたが、終始楽しめたようだった。

ハッセルブラッドなどフィルムカメラで参加した人も

オールドレンズならではの撮影法とポートレートのテクニックを両面で学ぶ

この教室では数パターンのシーンで撮影するが、その都度講師が場所や背景を選ぶ。最初は日陰になっている撮りやすい場所で肩慣らしとなった。大浦氏からは、フォーカスエイドや拡大表示といったピント合わせ機能の説明もあった。

続いては、絞り別の描写の違いを見る撮影に移った。大浦氏によると、古いレンズは特に絞り開放と1~2段絞った際の描写が大きく変わり、これがオールドレンズの面白さの1つとのことだった。

さらに、前ボケを入れたシーンの撮影もあった。大浦氏は、前ボケと後ろボケがどのように異なるのかを知っておくことも重要だとした。前ボケはレンズによっては後ボケよりも汚いボケになることも多いのだそうだ。

これは前ボケを入れて撮影しているシーン
水面の反射を作品に活かす方法も披露。オールドレンズは逆光でフレアやゴーストが起こりやすいが、それも写真に取り入れると良いとのこと
薄暗くなってからは自動販売機を使った構図が紹介された

松川氏は、ポートレート撮影のテクニックを披露。ポートレートは縦位置撮影が基本とされるが、横位置にして背景を大きく入れることで構図にバリエーションが出るとした。例としてモデルを画面の端に配置する大胆なフレーミングを手本として示した。一眼レフカメラでは測距点が中央に寄っているため、フレーミングでコサイン誤差が出やすいことについても触れた。ミラーレスカメラ(ライブビュー撮影)であれば、画面のどこでも拡大してピントを合わせられるため活用すると良いとのアドバイスをした。

また松川氏は、ポートレート撮影ではマニュアル露出が使いやすいことも説明した。絞り優先の場合、特に背景に太陽が入ったり輝く水面が入ったりすると露出補正の範囲では調整が間に合わないこともあるという。マニュアル露出の数値がわからない場合は、絞り優先で出たシャッター速度をマニュアルモードで設定すると良いとのこと。

前ボケのシーンでは松川氏から、ポートレート撮影で効果的な前ボケの入れ方やカメラ、前ボケ(今回は植物)、被写体の位置関係をどのように設定すれば良いかという説明もあった。

今回は、筆者も3本のオールドレンズを持参して撮影にチャレンジしてみた。講師のアドバイスを活かすと、今まで撮ったことのないような構図の写真になった。また、周辺減光や独特のボケ、逆光時のフレアなど、モデル撮影でのオールドレンズの描写も楽しめた。ピントの甘い写真も多かったが、それがまた次にリベンジしたいという気持ちにさせる。

筆者が使用したのは「INDUSTER-50-2 F3.5」(手前、M42)、「Nikkor-s Auto 35mm F2.8」(右、F)、「ISCO-GÖTTINGEN EDIXA WESTANAR 150mm F4.5」(左、M42)。カメラはキヤノンEOS 5D Mark II
Nikkor-s Auto 35mm F2.8
EOS 5D Mark II / 1/125秒 / F3.5 / ISO400
EOS 5D Mark II / 1/100秒 / F3.5 / ISO800
INDUSTER-50-2 F3.5
EOS 5D Mark II / 1/160秒 / F3.5 / ISO400
EOS 5D Mark II / 1/160秒 / F3.5 / ISO400
ISCO-GÖTTINGEN EDIXA WESTANAR 150mm F4.5
EOS 5D Mark II / 1/250秒 / F4.5 / ISO200
EOS 5D Mark II / 1/160秒 / F4.5 / ISO1600
EOS 5D Mark II / 1/6,400秒 / F4.5 / ISO100

今回の撮影教室は機材の話に偏ること無く、ポートレート撮影のテクニック解説も多かったことが印象に残った。一般の撮影会ではこうしたテクニックを学ぶことは難しいと思うので、オールドレンズでの撮影も楽しめて写真の腕も上がる今回のようなイベントがさらに増えると良いと感じた。

松川氏がタブレットで手本を見せながら解説するのでわかりやすかった

教室を終えた松川氏は、「参加者がこれほど楽しんでいる様子は他の写真教室では味わえないものだった。この写真教室をこれからぜひ育てていきたい」と手応えを語った。

また大浦氏も、「ちょっとしたノウハウがあるかないかで写真が変わる。ワンポイントアドバイスをするとみんな喜んでもらえた。オールドレンズの話題で参加者と盛り上がったのも良かった」と話した。

次回の開催もあるとのことなので(日程未定)、気になる人はチェックしてみてはいかがだろうか。

講師に質問すれば様々なアドバイスがもらえる。レンズ談義にも花が咲いていた

(本誌:武石修)