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「LUMIX DMC-G1」で楽しむマウントアダプター(ペンF/オート110編)

Reported by 中村文夫

LUMIX DMC-G1とペンFマウントレンズ こちらはオート110用レンズとDMC-G1

 マイクロフォーサーズのフランジバックは20mm弱と、レンズ交換式デジタルカメラの中で最も短い。現在市販されているマウントアダプターはライカM用とキヤノンFD用の2種類だけだが、理論的には、これ以外にも、さまざまなレンズが取り付け可能だ。

 なかでも組み合わせて面白そうなのは、オリンパスペンF用とペンタックスオート110用レンズだ。小さなフォーマットのために作られているので、コンパクトなLUMIX DMC-G1にぴったり。焦点距離も短いので35mm用レンズのように画角が極端に狭くならず、広角撮影も楽しめる。

 DMC-G1にとって「よいことずくめ」の交換レンズだが、ライカMやキヤノンFDほど中古品が豊富に出回ってない。マウントアダプターメーカーとしても販売数が見込めない商品の優先順位は低く、これらのレンズ用アダプターが商品化されることは恐らくないだろう。ならば作ってしまえ、ということで、自作に挑戦することにした。


オリンパスペンF

 オリンパスペンFは1963年にオリンパスが発売した世界初のハーフサイズ一眼レフだ。ペンタプリズムの代わりにポロプリズムを採用することでボディ上面をフラット化。それまでの一眼レフの常識を破るデザインとコンパクトさで一世を風靡した。さらに横方向へ動くミラーなど、デジタルカメラのE-300、E-330のルーツになった機能が随所に見受けられる。このほかロータリー式フォーカルプレーンシャッターによりストロボが全速で同調するなど、とにかく独創性にあふれた一眼レフだ。

 フィルムサイズは35mm判の半分の18×24mm。画角を35mm判に換算する際は焦点距離に1.4を掛ければ良く、たとえば20mmは28mmに相当する。フランジバックは29.3mm。マイクロフォーサーズより約9mm長く、マイクロフォーサーズアダプターの製作が可能である。


オリンパスペンFT(左)。TTL露出計を内蔵したペンFの後継機。一眼レフでありながらボディ上面がフラットで、スッキリしたデザインになっている レンズマウント

自作したペンF→マイクロフォーサーズアダプター

ペンタックスオート110

 1979年にペンタックスが発売した110フィルムを使用するレンズ交換式一眼レフ。ファインダーは本格的なペンタプリズム式、ミラーもクイックリターンと35mm一眼レフに引けを取らないスペックを実現している。ズームレンズを含め、全部で6本の交換レンズをラインアップ。110判のフィルムサイズは13×17mmで奇しくもフォーサーズとほとんど同じ。そのため広角から望遠撮影まで楽しめる。


オート110の後継機(左)。セルフタイマーを内蔵したほか、シャッターボタンが電磁レリーズ式になっている レンズマウント。マウント内の四角い開口部がビハインド式シャッター。シャッターが絞り羽根を兼ねているのでレンズ側に絞り機構がない。そのためDMC-G1に取り付けた場合は、絞り開放でしか使えない

自作したペンタックスオート110→マイクロフォーサーズアダプター ペンタックスオート110用レンズは非常にコンパクト。手のひらにすっぽり収まる

カメラボディに比べレンズが極端に小さく、気を付けないとレンズに添えた指が画面に写り込んでしまう。レンズフードを付けるとこれが防げるが、サイズが特殊なので合うフードがなかなか見つからないのが悩みのタネ


自作について

 今回、私が作ったアダプターは既存品の寄せ集めだ。マイクロフォーサーズのマウントはキヤノンFD用アダプターを分解したもの。ペンF用レンズを取り付けるマウントはテレコンバーターから。ペンタックスオート110用マウントはジャンクボディから調達した。フランジバックは厚みの異なるアルミ板を重ねて調整。最初は簡単にできると高をくくっていたが、実際に工作を始めてみるとアルミ板の加工に手間が掛かり、それぞれのアダプター製作に丸一日を費やしてしまった。

 また完成したアダプターで試写したところ片ボケが発生。予想以上に焦点深度が浅く、アダプターのマウント面と撮像素子の平行が完全に保たれていないと片ボケになってしまうのだ。要するに画面が小さくなるほど高いメカ精度が要求されるというわけ。マウント取り付け部にスペーサーを挟んでこれを調整、試行錯誤の末、何とか撮影できるようにしたが完全に調整することはできなかった。したがって作例の中には片ボケが目立つものがある。これはマウントアダプターの完成度が低いためで、決してレンズの性能のせいではない。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。


オリンパスGズイコーオートW 20mm F3.5

 ペンF用レンズ中で焦点距離が最も短いレンズ。ペンFに使用したときは28ミリ相当の広角になるが、DMC-G1では40mm相当の準標準レンズになる。開放から高い解像力を示すがボケ味はそれほどでもない。



DMC-G1 / GズイコーオートW 20mm F3.5 / 約5.5MB / 4,000×3,000 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード / シーンモード:花 DMC-G1 / GズイコーオートW 20mm F3.5 / 約3.6MB / 3,000×4,000 / 1/250秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード

DMC-G1 / GズイコーオートW 20mm F3.5 / 約4.9MB / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード

オリンパスFズイコーオートS 38mm F1.8

 ペンF用標準レンズ。開放時のボケ味が良く、DMC-G1用大口径中望遠レンズとして利用価値が高い。中古市場の売価も、それほど高くなく、お買い得のレンズと言えるだろう。



DMC-G1 / FズイコーオートS 38mm F1.8 / 約4.1MB / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード DMC-G1 / FズイコーオートS 38mm F1.8 / 約5.6MB / 4,000×3,000 / 1/50秒 / F3.5 / 0EV / ISO800 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード

オリンパスEズイコーオートT 100mm F3.5

 絞り羽根の枚数が5枚と少ないので、条件によってはハイライト部のボケに影響が出るが、ボケ味は意外なほど素直。画質も全体的にシャープだ。



DMC-G1 / EズイコーオートT 100mm F3.5 / 約4.5MB / 4,000×3,000 / 1/1,000秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード DMC-G1 / EズイコーオートT 100mm F3.5 / 約3.9MB / 4,000×3,000 / 1/1,300秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / フィルムモード:スタンダード

オリンパスEズイコーオートT 150mm F4

 ペンFで使用すると210mmに相当する本格的な望遠レンズ。DMC-G1では400mmの超望遠レンズになる。開放だと甘さが残るが、絞ると信じられないほどシャープになる。



DMC-G1 / EズイコーオートT 150mm F4 / 約4.3MB / 4,000×2,248 / 1/800秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / フィルムモード:スタンダード DMC-G1 / 約4.0MB / 3,000×4,000 / 1/800秒 / F / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード

ペンタックス110 18mm F2.8

 35mm判の35mmに相当する広角レンズ。もともと110フィルムは、それほど大きく引き伸ばすことを前提にしていないので、レンズの方も、それほど高解像度の設計になっていないようだ。だがトーンの再現性は高く味わい深い描写になる。

 像面彎曲の影響で遠景だと画面周辺部の甘さが目立つ。絞りを絞れば改善できるはずだが、DMC-G1だとこれは不可能。また日中の晴天下では、露出オーバーになることも多い。

 なお18mmレンズには、ピント固定式のパンフォーカスレンズもあるが、DMC-G1ではピンボケになるので今回のレポートでは使わなかった。



DMC-G1 / 110 18mm F2.8 / 約4.6MB / 4,000×3,000 / 1/3,200秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード / シーンモード:風景 DMC-G1 / 110 18mm F2.8 / 約5.4MB / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード

DMC-G1 / 110 18mm F2.8 / 約5.3MB / 3,000×4,000 / 1/20秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード

ペンタックス110 24mm F2.8

 オート110用標準レンズ。ディストーションが良好に補正されボケ味も良い。最短撮影距離が35cmと短く接写にも便利。中古価格は数千円とコストパフォーマンスも高い。マイクロフォーサーズ用ボディキャップを利用して簡易型のアダプターを作ってみるのも良いだろう。



DMC-G1 / 110 24mm F2.8 / 約5.5MB / 4,000×3,000 / 1/1,600秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード / シーンモード:風景 DMC-G1 / / 約3.9MB / 3,000×4,000 / 1/800秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:日陰 / フィルムモード:スタンダード

DMC-G1 / 110 24mm F2.8 / 約4.6MB / 4,000×3,000 / 1/10秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / フィルムモード:ダイナミック

ペンタックス110 50mm F2.8

 35mm判の100mmに相当する中望遠レンズ。今回使用した110用レンズの中で最もボケ味が良く好印象を受けた。フォーマットが小さければ、こんなにコンパクトな中望遠レンズが作れるという見本のようなレンズだ。



DMC-G1 / 110 50mm F2.8 / 約5.5MB / 3,000×4,000 / 1/1,600秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード DMC-G1 / 110 50mm F2.8 / 約5.2MB / 4,000×3,000 / 1/3,200秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード

DMC-G1 / 110 50mm F2.8 / 約4.1MB / 3,000×4,000 / 1/2,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード

ペンタックス110 70mm F2.8

 35mm判の140mmに相当する望遠レンズ。コントラストは低めだがボケ味は良い。コーティングがスーパーマルチではないので、逆光にはあまり強くないようだ。



DMC-G1 / 110 70mm F2.8 / 約4.1MB / 4,000×3,000 / 1/40秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / フィルムモード:スタンダード DMC-G1 / 110 70mm F2.8 / 約5.6MB / 4,000×3,000 / 1/30秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO800 / WB:オートフィルムモード:スタンダード / シーンモード:夜景

ペンタックス110ズーム 20-40mm F2.8

 35ミリ判の40~80mmに相当するズームレンズ。F値が明るく、そのうえ非常にコンパクトでスペック的には面白いレンズだが、像面彎曲のため画面中心にピントを合わせると周辺がかなり甘くなる。特に広角側でこの傾向が強く、条件によってはトイカメラで撮ったような画になってしまう。



焦点距離20mm
DMC-G1 / 110ズーム 20-40mm F2.8 / 約5.1MB / 4,000×2,672 / 1/3200秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / フィルムモード:スタンダード
焦点距離40mm
DMC-G1 / 110ズーム 20-40mm F2.8 / 約5.0MB / 4,000×2,672 / 1/3200秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / フィルムモード:スタンダード

焦点距離20mm
DMC-G1 / 110ズーム 20-40mm F2.8 / 約5.2MB / 4,000×2,672 / 1/2,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / フィルムモード:スタンダード

最後に

トミーテック(ボーグ)のDMC-G1用アダプター
 アダプターの製作に当たり、今回は既製品を分解するという荒技を使ったが、天体望遠鏡を扱うトミーテックからも自作派に最適なマウントが発売されている。このアダプターは同社製の延長筒やヘリコイド、変換リングなどを組み合わせることを前提に設計されていて、これを利用すれば引き伸ばし用レンズや35mm一眼レフ用レンズ、スポッティングスコープなどもDMC-G1に取り付け可能。アイデア次第で多彩な使い方ができる楽しい製品だ。

 このほかクラシックカメラ修理専門店のハヤタ・カメララボでは、シネカメラ用Cマウントレンズをマイクロフォーサーズに取り付けるアダプターを扱い始めるなど、マイクロフォーサーズ周辺では、ちょっとしたムーブメントが起こり始めている。

 今のところ、マイクロフォーサーズを採用したカメラボディはDMC-G1だけだが、オリンパスが昨年発表したプロトタイプを始め、今後も新製品の発売が期待されている。当分の間、マイクロフォーサーズから目が離せない状態が続くだろう。



URL
  パナソニックLUMIX DMC-G1関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/10/02/9224.html



中村文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2009/02/09 00:13
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